脳と痛みの関係を徒手医学の観点から追究する臨床研究会。脳科学に立脚した最新の医療技術BFI-三上が唱える“痛み記憶の再生理論”に基づき脳内補完の過活動(脳における情報処理システムのエラー)を形成する動的神経回路の再統合を促す徒手医学-。

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関節反射とは

関節は自らの中にセンサー(関節受容器)を配し、それらを介した反射システムにより関節包の緊張と関節内圧を調節し、周囲筋群の緊張も制御しています。この働きを関節反射と言います。
このとき関節の静止状態を制御するものを「関節静止反射」と言い、関節の運動を制御するものを「関節運動反射」と言います。


関節受容器の機能総覧

TypeⅠ TypeⅡ TypeⅢ TypeⅣ
形態 ・ルフィニ小体様。
・薄い被膜の卵円形の小体(100μ×40μ)。
・38個でブドウ房状の集落を形成。
・パチニ小体様。
・厚い被膜の円錐形小体(280μ×120μ)。
・24個の集まりを作る。
・ゴルジ腱器官。
・薄い被膜の紡錘状の小体(600μ×100μ)。
・23個の集まりを作る。
TypeⅣ(a)…神経叢
TypeⅣ(b)…自由終末
位置 ・線維性関節包の表層。 ・線維性関節包の深層。
・関節脂肪織。
・関節靭帯。
TypeⅣ(a)…線維性関節包、関節脂肪織、靭帯、血管壁。
TypeⅣ(b)…関節靭帯。
神経線維 ・細い有髄線維(69μ)。 ・中間の有髄線維(912μ)。 ・太い有髄線維(1317μ)。 ・細い有髄線維(25μ)と無髄線維(<2μ)
作用 ・静的、動的機械受容器。
・関節包の張力(関節内圧と外的牽引力)に反応して、安静時1020Hzで常に活動。
・関節が動いた際の距離と速さに比例して反応。
・動的機械受容器。
・関節不動時は不活性。
・関節が動き始めた瞬間に2秒以下の反応を示す。
・動的機械受容器。
・不動時および通常の運動では不活性だが、強大な張力に反応。
・局所における関節反射を抑制。
・侵害受容器。
・関節の損傷や病理的化学変化に反応。
反応特性 ・速い反応(低閾値)。
・ゆっくり順応。
・速い反応(低閾値)。
・速い順応。
・高閾値。
・非常にゆっくり順応。
・高閾値。
・非順応。
場所 ・四肢では近位(肩・股関節)に多く、遠位に向かい減少する。
・脊柱では頸椎に多く、仙尾方向に減少する。
・関節包の張力が大きく変化するところに多い(足関節、膝関節の前後に多い)。
・四肢では近位に少なく、遠位に向かい増加する。
・脊柱では頸椎に多く、仙尾方向に減少する。
・肩関節、股関節より指節間関節に多い。
・四肢にあって、脊柱にはない。 ・ほとんどの関節にある。
Wyke,B.:The neurology of joints : a review of general principles. Clinics in Rheumatic Diseases, 7:223-239,1981


三上の視点

TypeⅠが安静時に常に活動している理由は重力加速度すなわち静的加速度を検出しているからであり、運動時に反応するのは動的加速度を検出しているからである。3度の運動自由度(回旋運動を包含)の関節にTypeⅠが多く存在する理由は、3軸検出能力を持つセンサだからと考えられる(これは単体としての性能ではなく、おそらくブドウ房状の集落を形成することに起因する能力であろうと推度される)。

機械工学における加速度センサは、一般に1s(秒)当たりの速度の変化を検出しており、振動センサと異なり、直流(DC)の加速度が検出可能であるため、その多くは静止状態における静的加速度すなわち重力加速度も検出する。人間の関節受容器TypeⅠもこれと同じ原理で働いている可能性が高い。

⇒重力加速度とは?

他方、TypeⅡはパチニ小体様であることから、主に振動を検出するセンサであることが類推される。手掌、足底に見られる径3~4mmにまで達する大型のファーター・パチニ小体は典型的な振動感知器である。その内部構造は内棍と外棍に分かれており、これは昆虫の平均棍(振動により飛翔運動の角速度を検出する感覚器で、いわば航空機のジャイロスコープの働きをする)と酷似している。これらの事実から,TypeⅡはまさしく“振動型ジャイロスコープ”と見なすことが可能で、振動を感知することで角速度を検出していると臆断される。

⇒振動型ジャイロスコープとは?

質量を持った物体がある速度を持って運動しているとき、その物体に角速度が作用すると、見かけ上の力(コリオリの力)が発生する。さらに加速度が物体に作用すると力(ニュートンの法則 F=mAによる)が発生する。人間の関節において、前者を検出するセンサがTypeⅡであり、後者を検出するセンサがTypeⅠであるというのが三上の見方である。

また、関節内圧の制御においても、関節受容器の関与が推度される。たとえば膝関節の屈曲角度の変化に伴う内圧変動は万人に共通のパターンというものはなく、顕著な個体差が見られることが分かっている。伸展から徐々に屈曲させていくと、内圧が↗↘という人もいれば、↘↗という人もいれば、変動幅が小さい人もいるといった具合である。この理由を考察するなかで導き出された「内圧制御と関節液の入排出システムの関係(三上の推論)」は以下の通り。

関節液の分泌と吸収は滑膜B型細胞が担っていると考えられているが、その詳細については脳脊髄液や眼房水ほどは分かっていない。細胞外液に満たされる準密閉構造の組織においては、脳脊髄液や眼房水に代表されるように、液量の調節は“内圧変動による強制排出方式”である。これは蛇口にレバーを設けないシステムであり、三上はこれを“蛇口開きっ放しの法則”と呼んでいる。

⇒関節液の入排出システム

関節は静止状態でも常に重力の影響を受け、“引っ張られている“。筋肉は筋トーヌスという抗重力反射を持っているが、実は関節も“関節トーヌス”とも言うべき“関節軟部組織(関節包や靭帯)の緊張”を持っている。この関節トーヌスと蛇口開きっ放しの法則によって関節液は常に分泌され、その関節液が充満することで-水が充満することで膨らむ水風船のように-内圧が生み出されており、脳脊髄液や眼房水と同様に排水の調節によってのみ、関節液は一定に保たれている。

このときTypeⅠが内圧上昇に反応することで排水が促されるが、TypeⅠの感受性能もしくはその情報を処理する中枢システムにエラーが生じると、排水がストップする。これが関節水腫である。三上は心理的に激しいストレスに同期して水腫が増減する膝関節炎の症例を経験している。この事実は脳内における感情プログラムのエラーが関節反射の中枢に影響を与えることで、TypeⅠによる内圧監視システムの破綻(関節水腫)を引きおこす可能性を示唆している。

一方で、TypeⅡは四肢末端の関節に多く存在し、関節が動き始めた瞬間2秒以下の反応をし、速い反応と速い順応性を有していることから、最初に外力を受けやすい手足の末端において、振動を感知しつつ内圧低下を見張っている可能性がある。

関節トーヌスによって、常時張力が発生し続けている関節包に対して、常にブレーキを踏みつつ、動きに応じてそのブレーキの強弱を変えるシステムが関節反射だと言える(実際にプレーキを踏むのは中枢の仕事)。

以上の考察を踏まえ、膝関節の運動に伴う内圧変動パターンに個体差が見られる理由は、関節液量を一定に保ちつつ内圧を制御するシステムすなわち関節反射の中枢-おそらく小脳が主役を務める情報処理システム-の性能に個体差があるからではないのか、と推考される。感情プログラムの問題を抱えた生体に見られる内圧制御の破綻(関節水腫)がこの考えを後押ししている。以上を整理すると次のごとくである。


TypeⅠ
・3軸加速度センサ(静的加速度センサ、動的加速度センサ)。
・3軸検出能力があるため、回旋運動の加速度に反応することができる。
・そのため運動自由度が3度の関節(肩関節、股関節)に多いと解釈できる。
・関節包の緊張に反応し、関節軟部組織の緊張および筋トーヌスの調節に関与。
(関節液の排水を促すことで関節内圧を一定に保つ)。


TypeⅡ
・3軸角速度センサ(振動型ジャイロスコープ)。
・微振動を検知すると、当該関節を含め一側同側の複数の関節軟部組織の緊張を高める。
・そのため直接振動(外部との接触)を受けやすい四肢末端の関節に多いと解釈できる。
・関節包の緊張は動揺性の亢進を意味し、微振動を受けやすくなるため、反応性が高まる。
・つまり関節包の緊張(微振動)に反応し、2秒以下のの反応を示すと同時に、関節包の緊張を短時間回復させる(関節液の排水を抑えることで関節内圧の低下を防止する)。


現代社会において、加速度センサと角速度センサはカーナビ、エアバッグ、デジカメ、スマホ、ゲーム機器、セグウェイ、ロボット、航空機など、あらゆる精密機器に欠かせない入力装置である。通常、3次元空間の物体の動作は加速度と角速度で表され、これらを検出するセンサは主にマイクロマシニング技術やセラミック技術を用いて作られている。人間の身体においては、関節に内蔵されているルフィニ小体とパチニ小体すなわちTypeⅠTypeⅡが同様の入力装置だと類推される。

機械工学における制御系では、フィードバック制御の欠点(外乱を受けた影響が実際に現れてからでないと修正できない)を補うため、フィードフォワード制御(いち早く外乱を検出して影響を最低限に留める)を併用するケースがほとんどである。

⇒フィードバック制御とフィードフォワード制御の違い(水槽の例)

実は人間の運動器の制御もまったく同じだと臆断される。すなわち筋受容器によるフィードバック制御、関節受容器によるフィードフォワード制御、これら両者による制御が並立することではじめて、筋トーヌスと関節トーヌスの適切な維持管理が為されている。

関節受容器が目に見えない小さな外乱(微振動や圧変化等)を検出することで、実際に筋が収縮する前に筋や関節軟部組織の緊張を変える働きがあるのではないか。こうしたフィードフォワード制御を管理する主要な部署が“小脳”だとすれば、BFI -複数関節への同時多発的な極微刺激-によって筋や関節の緊張が変わる現象も、小脳の働きとして説明できるのではないかというのが、現時点における三上の推論である。



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関節受容器の組織学的証明

関節包・滑膜・脂肪体・関節唇・半月板・側副靭帯・前十字靱帯・後十字靱帯・脊椎の靭帯・足底部など。